縁側で冷や酒を飲んでいると、ススキを両手に持ち、駆けてくる影一つ。




お月見団子



はニンジャの前で急停止すると、息を切らせながら笑う。

「父上、もうすぐ十五夜ですね!」
「おぉ…そうであったな」
「うさぎさんです!」

バッと夜空に浮かぶ月をさして、は喜々として言った。
お月さまに住んでるうさぎさんは、モチつきをするんですよ!
それは只のクレーターがそう見せるだけなのだが、この小さな子供の夢を壊したくないと思うのが親の心情。
ニンジャはにっこりと笑って、そうか。と答えた。

「…で、どうなんだ、月見団子が喰いたいのだろう」

ニンジャは意地悪く言うと、は笑みを今度は恥ずかしそうに下を向き、もじもじしながら答えた。

「………うん」
「はは、正直な子だ」

ニンジャが笑うと、はむっとして睨み付ける。

「そう気を悪くするな。子供がよく食べるのはよい事だ」

その日に作り方を教えてやろう。
ニンジャはそう言うと、もうすぐ夜なのだから家にはいるようにとを促し、はススキを手放し、家の中に駆けだした。






は坂道を転げ落ちるように走る。
ニンジャから渡された買い物リスト、それの最後に「拙者が修行から戻るまでに準備を整えている事」と書いてあったものだから、もう時間がないと焦っていたのだ。
なにせ家が秘境と言われるほど山奥なものだから、忍びに距離は関係ないといえども、所詮は子供。
往復で最短二時間。
もう時間を切っていた。







「はぁ、はぁ…ただいまぁ…はぁー」

心臓位に手を当てて、荒い息を整えようと大きく息を吸う。
息を整える最良の方法を教えて貰わないと…はそう思った。
何時までも玄関で突っ立っているわけにはいかないので、台所に行き、下準備をはじめる。
といっても、そう大層なものではないのだが…。

「どうだ?出来ているか」

ビュッと風を斬る音をわざとだし、の背後に現れる。

「ち、父上ー!!びびび、ビックリるすじゃないですか」

バクバクと心臓が脈打ち、顔面蒼白にはニンジャを非難した。

「すまん…」
「はー、はー、とりあえず、できてますよ!」

さぁ、作り方おしえてくださいな!
は目を輝かす。

「ふむ…手は洗ったか?」
「それはしゅぎょう帰りの父上が聞くべきことばだと思いまーす」

は元気良く右手を上げる。
それにニンジャは苦笑して、そうであったな、と手を洗う。

「さて、では、作ろうか」





「まず―…上新粉と白玉粉を混ぜ合わせ、少しずつ湯を加え、手でこねる」
「はい」

ボウルには言われ通りに粉を混ぜ合わせる。
あらかじめ沸かし、少し冷ましておいた湯を持って、は止まった。

「父上ー…」
「湯は拙者が加えよう。触れる程度だが風呂より熱いからな、気を付けるんだぞ」

つつ…とボウルに湯を注いでいく。
は怖がりながらも、丁寧にこねてゆく。

「これで、耳たぶ程度の柔らかさにするんだぞ」
「みみたぶ…」

は呟き、生地から手をゆっくり離して…

「こら。料理中に耳たぶを触ろうとするんじゃない」

ニンジャにズバリ見抜かれて、エヘヘと照れ隠し。





「次に。手に水をつけながら丸めるんだ」
「どろだんごみたいに?」
「う…あ?あぁ。そうだ」

まぁ丸めるには似たようなモノかとニンジャは考え、頷く。
しかし。
ちょいと丸めるには時間が掛かってないだろうか。

、いくら磨いても泥団子みたいに光らないかな」
「え、そうなの?」
「…」

残念そうには団子を見る。
見たら手水がすっかり無くなり、哀れ団子の生地が手に粘ついていた。

「あぁ〜!」
「はぁ…手水がきれないうちに丸めるんだぞ」






「次にあんだな」
「餡?」
「つけるヤツだ」

ニンジャは鍋を出し、水を適量入れて弱火に掛ける。

「lここに各種調味料と片栗をを適量入れるんだ」
「おー!」

は元気良く返事をしてニンジャが分けてくれた調味料群をドバドバと入れた。

「そんな大雑把に入れるでない…」
「おー!」

いよいよ完成が近くなって食べられると分かっているはそんな事を聞かない。
ただもうすぐ食べられるという喜びにもう浸っている。

「聞いとらんか…、後は自分でかき混ぜよ。とろみが付くまでだ」
「おー!!」

バッとはしゃもじを受け取って、嬉しそうにかき混ぜ始めた。







「できた、できた!」
「うむ、上出来だ」

二人は月見団を持って縁側に出た。
三日月だが、には関係ない。

「(もうちょっと風流な感があってもいいのだがなぁ)」

ニンジャは猪口を口に運びながら思う。
は皿に並べられた月見団子を調子よく口に運んでいく。

「おいひい〜もぐもぐ」

美味しそうに頬張る娘の姿に、ニンジャはクスリと笑みを漏らす。
と、は急に食べるのを止め、ひーふーみーと団子を数え始めた。
何をするかと思えば、どこからかお三方を引っ張り出し、半紙を折って皿を乗せ、団子を積み上げる。
縁側に降りてキョロキョロと辺りを見渡すと、足下の何かに気が付いて、それを持ち上げる。

「あ、おいっ…」

ひょいとニンジャの持っていた徳利を持ち上げ、中身がない事を確認する。

「借りるね」
「何するんだ?」

は徳利の中に先ほど持ったススキを挿した。他にもススキを数本折って、徳利に挿す。
それを団子を盛ったお三方の隣に置き、ててて…とニンジャのところに寄ってきた。

「どうした?」
「えへー」

胡座をかいていたニンジャに座り、両腕をに自らの腕を絡ませて揺らす。

「こら、酒がこぼれてしまう」

注意も聞かず、は言った。

「お団子ね。うさぎさんにもあげるの。さぁ、どうぞ」

風がススキを鳴らし、呼びかけに応じるように雲の合間から、月のうさぎが顔を覗かせた。





久々に書きました…。
ニンジャって菓子作りに詳しそう…て、月見団子ぐらい簡単に作れちゃいますけど…。 しかし、あんまり父親らしくないですね、ニンジャ。精進しなければ。







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